空猫雲色

個人的な小説をバンバン書いています。

 再びブルーバード号に戻ってきてしまった雪雫は医務室にいた。
「よし、これで完璧だ。」
沙恵が額の汗をぬぐう。
「おいこら、沙恵。これのどこが完璧か言ってみろ。」
全身包帯でぐるぐるまきにされ、ミイラ少女状態にされた雪雫が非難の声を上げる。
「どこがって全て抜け目なく巻いてるじゃん。」
「あたしが怪我したのは足だけじゃー!」
ついに切れてしまった雪雫が沙恵とどんぱちを始める。
「おーおー、元気そうだね。雪ちゃん。」
扉を開けて綾瀬がにこやかに入ってくる。
「えぇ、おかげさまでね。」
息を整えながら雪雫は包帯を解き、自分の足へと巻いていく。
「それよりもお2人さん。ついにバルバサに持っているロケットとカットラスがアトランティスの秘宝だとばれてしまったけどどうします?あいつはそれこそ蛇のように執拗に付きまとってくるけど海軍本部に居ればまず安全だと思うよ。ちょっと危険だけどなんだったら送ろうか?」
沙恵の言葉に綾瀬と雪雫は目配せし、決心したようにお互いうなずいた。
「その前にね、沙恵ちゃん。教えてほしいことがあるんだ。」
「何?あーちゃん。」
「沙恵ちゃんはどうしてバルバサを追ってるの?」
沙恵は綾瀬を見つめたまま何も言わない。それを見て雪雫が確信を持ったように
「沙恵、あんたはあたし達と同じでアトランティスの秘宝の1つ、ピストルを持っていた。だけどバルバサに奪われ今でもそれを追ってるんじゃないの?」
「単刀直入だねー、ゆーさんは。」
沙恵は負けたよ、というような顔で首を横に振ると
「まぁ、減るもんじゃないし、話してもいいか。ただし、これから話すことは決して楽しい話じゃないから覚悟してね。」
雪雫と綾瀬はうなずいた。
「うちの家はさー、代々海賊船の船長やってるのよ。そんでその証としてピストルを受け継いでいたわけ。んで、バルバサはちょうどうちの父さんが船長だったときの船員で結構信頼されてたのよ。」
ここで綾瀬が口をはさんだ。
「て、ことはシェーンって言う人は沙恵ちゃんのお父さんって事だよね。」
沙恵はうなずいた。
「そんでうちの父さんはピストルに刻まれたアルファベットと数字が気になってたみたいでバルバサと一緒に長いこと調べてたみたい。そしてその文字がアトランティスを復活させるための暗号だと知ったわけ。」

 夜の波の音が静かに聞こえる船長室でシェーンとバルバサはろうそくをはさんで向かい合って座っていた。
「船長、アトランティスの4つの秘宝を探しに行きましょう。」
興奮した様子で言ったバルバサとは対照的にシェーンはいたって冷静だった。
「いや、アトランティスの秘宝は探しに行かない。」
「なぜですか!」
バルバサが机を叩いて勢いよく立ち上がる。
「残りのアトランティスの秘宝が見つかれば大富豪になれるほどの財宝が手に入るかもしれないんですよ!」
「バルバサ、今まで付き合わせてきたことを本当にすまなく思う。だが、アトランティスは復活させてはいけないと俺の本能が感じている。これまで調べてきたことは全て忘れるんだ、俺も忘れる。」
シェーンは立ち上がるとドアノブに手をかけた。
「それに俺は地に根を張って安穏に暮らすよりも海の上で暮らしている方が性に合ってるんだ。」
そう言い残すとシェーンは扉を閉めた。後に残されたバルバサの中にドロドロとした物があふれ出る。
 宝は・・・アトランティスの宝は俺1人の物だ・・・。
武器を手にしたバルバサは甲板の上に居た仲間を皆殺しにし、最後にシェーンを殺すと秘宝の1つであるピストルを奪った。
「パパ?」
騒ぎに目を覚ました幼い沙恵が甲板の惨事を見て小さな悲鳴をあげた。
「人殺し・・・。」
沙恵は短く言うとバルバサが銃を撃つよりも先に冷たい夜の海へと飛び込んだ。バルバサは沙恵の行方など気にもとめず、1人船の舵を取って闇の中へと消えていった。

「その後、あたしは流れ着いた島で昔馴染みに助けられ機を待ち、信頼できる仲間を集めて奪われたピストルを取り返すためにこうして海賊をやてるってわけ。」
言い終わると沙恵は顔を上げた。
「そんで、お2人さんはどうするの?」
「沙恵ちゃん。私達、アトランティスに行く。」
綾瀬はロケットに手を当てて言い、沙恵は目を見開いた。
「本気で言ってるの?てか、今の回想見てた?」
「うん、ちゃんと穴があくぐらい見てたよ。だから沙恵ちゃんのお父さんがアトランティスへ行くのは危険だと感じたことも知ってる。だけど私が感じていることは逆なの。こうしてアトランティスの秘宝の持ち主3人が出会ったって事はアトランティスは私達を呼んでいるんじゃないかって思うの。」
沙恵は雪雫に目を移した。
「あたしはあーちゃんに付いていく。」
決心固く言った雪雫と綾瀬を交互に見て沙恵はうなずいた。
「分かった、あたしも行くよ。先回りしとけばいずれバルバサにも会えるもんね。」
2人はうなずき返した。
「そうなると問題は残り1つの秘宝がどこにあるかだよね。」
「それなら当てがあるよ、ゆーさん。」
綾瀬と雪雫が同時に振り返ると沙恵はにやりと笑った。
「昔のよしみに1人ね。」












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